小学校第2学年歌唱共通教材「虫のこえ」について解説していきます。
後半では、ピアノ伴奏をする際のコツや指導する際のポイントについてもお伝えしていきます。
歌詞
まずは歌詞です。1番と2番から成っています。
1.あれまつむしが 鳴いている
チンチロチンチロチンチロリン
あれ鈴虫も 鳴きだした
リンリンリンリン リーインリン
秋の夜長を鳴き通す
ああ おもしろい 虫のこえ
2.キリキリキリキリ こおろぎや
ガチャガチャガチャガチャ くつわむし
あとから うまおい おいついて
チョンチョンチョンチョン スイッチョン
秋の夜長を鳴き通す
ああ おもしろい 虫のこえ
歌詞の変遷
2番の歌詞の「キリキリキリキリ こおろぎや」の部分はもともとは「きりきりきりきり きりぎりす」でした。
新:こおろぎや 旧:きりぎりす ということですね。
これは、こおろぎのことを昔は”きりぎりす”と言っていたからです。
実際の鳴き声をひらがなで表してみると、こおろぎは”りりりりりー”とか”ころころころころー”という感じですが、きりぎりすは”ぎー、ちょん”という感じです。
つまり、歌詞の中の”きりきりきりきり”の部分はこおろぎの鳴く声を表すものだったんですね。
文部省が1910年に初めて編集した『尋常小学読本唱歌』に掲載された時には”きりぎりす”という歌詞でしたが、1932年に編纂された『新訂尋常小学唱歌』に掲載された時には”こおろぎや”に変更されました。
登場する虫(鳴き声も紹介)
まず、登場する虫たちの紹介です。
歌詞を見て何種類の虫たちがいるかわかりますか?
答えは5種類です。
1番に2種類、2番に3種類潜んでいますが、見つけられましたか?
実際の歌詞の中から探してみましょう。
1.あれまつむしが 鳴いている
チンチロチンチロチンチロリン
あれ鈴虫も 鳴きだした
リンリンリンリン リーインリン
秋の夜長を鳴き通す
ああ おもしろい 虫のこえ
2.キリキリキリキリ こおろぎや
ガチャガチャガチャガチャ くつわむし
あとから うまおい おいついて
チョンチョンチョンチョン スイッチョン
秋の夜長を鳴き通す
ああ おもしろい 虫のこえ
5種類いましたね。
2番の「うまおい」が虫だと気がつかない人も多いです。
この虫たちを実際に見てみましょう。
①まつむし

マツムシの鳴き声はこちら
②鈴虫

鈴虫の鳴き声はこちら
③こおろぎ

こおろぎの鳴き声はこちら
④くつわむし

くつわむしの鳴き声はこちら
⑤うまおい

うまおいの鳴き声はこちら
いかがでしたでしょうか。
音を日本語にするのはなかなか難しいですが、歌詞の鳴き声の通りに鳴いている虫もいれば、ちょっと違うかな、という虫もいたかな、と思います。
こおろぎなんかは「キリキリ」というより「コロコロ」の方が近い気もします。
あとは、個人的にはクツワムシの鳴き声が本当にガチャガチャ鳴いているのがとても面白かったです。
楽譜では、他の4種類の虫たちは2小節かけて鳴き声を表していますが、クツワムシだけは1小節に凝縮されています。
実際に鳴いていたらかなりうるさそうですね。
演奏のヒント
この曲を演奏する時に押さえておくべきポイントをご紹介していきます。
楽譜にもよりますが、大抵のものには強弱が書かれています。
その強弱に従えばなんとなくそれっぽい演奏にはなりますが、その裏付けとなる「強弱の目的」を知っているのと知らないのとでは、演奏の説得力に雲泥の差があります。
他にもちょっとした音楽の知識などもご紹介しますので、これから小学生に教えられる先生方の指導のヒントにもしていただければ嬉しいです。

聴こえてきたうれしさ
まず、最初の歌詞 ”あれ まつむしが” の部分です。
この ”あれ” は、何かを指し示す ”アレ” ではなく、「あら」とか「あぁ!」といった、虫のこえが聴こえてきた感動を表しています。

聴こえたよ!という感動を持って演奏したいので、わくわくしながら演奏し始めるのがポイントです。
鳴き声を小さく
この曲の最大の魅力は、何と言っても虫の鳴き声ですね。
虫の鳴く声を文字で表しますが、それを「擬声語」と言います。
擬声語とは…
物音や動物の鳴き声をまねてつくったことば。「ガタガタ」「ザーザー」「ピヨピヨ」など。
新レインボー小学国語辞典【改訂第5版】 より
身近な音を擬声語で表してみるのも面白いですし、実際の鳴き声を聴いて各々の擬声語を作ってもらうのも面白いですね!
さて、本題に戻って「鳴き声を小さく」ですが、鳴き声のところが「p」(弱く)や「mp」(やや弱く)と小さい強弱記号で書かれている楽譜が多くあります。

これは、耳を澄まして聴くと聴こえる虫たちのこえを表しているからこそですね。
テレビの音量MAX、おしゃべりに夢中なんてことだと聴くことができない虫たちの鳴き声。
私は、開放的だった夏の雰囲気から、感性を磨く季節に入ろうとしていることを虫たちが知らせてくれているのだと思っています。
ここを演奏する時は、p(弱く)と言っても”弱々しく”はならずに、”耳を澄ませる!”と思って演奏すると「聴いてね!」という雰囲気が表せます。
鳴き声の部分に入る瞬間は、突入するのではなく耳を澄ませる緊張感を持ってから演奏すると、歌う時や聴く時に注目しやすくなります。
虫が増えると大きく
さて、耳を澄ませて聴こえる虫たちの鳴き声ですが、登場する虫が増えると鳴き声の部分の強弱記号が強めのものに変わります。(ご使用の楽譜によっては記載がない場合もあります。)

これは、別の種類の虫が鳴き声に参戦してくるイメージです。
最初は夕暮れ時に1匹だけの鳴き声が聴こえてきたのが、しばらくするともう1匹、しかも別の種類の虫の鳴き声が聴こえてくる、という感じですね。
1番の歌詞で言えば、2番目に登場する鈴虫の時にもマツムシはずっと鳴いていると考えられます。
1匹目の虫の時よりも少し大きな音で演奏するのがポイントですね。
半音で感動を
虫たちの鳴き声を聴いている最初の12小節のメロディーで使われている音は、実は4つだけなんですね。
下の音から ミ、ソ、ラ、ド の4つ。
なんてシンプル!
1911年に初めて教科書に掲載され、戦時中の掲載されない時期を経てもなお100年も人々の心をとらえる理由にもなっています。
残っていくものは、結局はシンプルなものだと私は考えています。
さて、そのミソラドの4つの音ですが、どれも鍵盤が隣り合っていません。
ソとラは隣り合っているように見えますが、鍵盤の奥を見てみると間に黒鍵があるので、ソとラは隣り合ってはいません。
鍵盤で見ると奥の方で隣同士になっている音というのは、”半音”と呼んでいて、実は歌うのが難しい音程なんです。
半音をうまく歌うには、丁寧に歌う必要があります。
歌いやすい曲は半音が使われていないことも多いです。
例えば『ちゅーりっぷ』や『メリーさんのひつじ』などがありますね。
さて、その”半音”が使われておらず歌いやすい前半が終わったら、ここぞ!というときに出没します。

ここですね!
”鳴き通す”んだ!という感動を半音に乗せて丁寧に演奏してみると、生き生きとした音楽になってきます。
さて、この半音ですが、同じ音の流れがもう一度繰り返されています。

2回目に出てきたときには、まさしく感動、”ああ おもしろい”と言っています。
そこはf(強く)という強弱記号がありますので、感動して演奏するといいのですが、大切なのはその準備ですね。
fに入る前にしっかり気持ちをふくらませてクレッシェンドしておくと、きつい音ではなく感嘆した音でfが演奏できます。
最後はていねいに

一番最後の音はドで終わりますが、その前はソです。
なんといきなり5度も下がってしまいます。
今まで隣の音(2度)や、一つだけ飛ばした音(3度)だったのに、ここで5度も下に飛んでいます。
いきなり飛ぶと、どうしても ”むしのこえ” というように、ドスンと落ちてしまいやすいです。
ここは曲の最後でもありますので、丁寧に演奏してあげることで曲のまとまりが出てきますね。
まとめ
虫の鳴き声が子どもたちの心をつかむ「虫のこえ」について解説してきました。
実際の虫の鳴き声と聴き比べながら、強弱記号に気を付けて演奏することがポイントですね。
もともとは3年生向けの本に掲載されていたこの曲は、戦時中に一時姿を消したものの、2年生向けにまた掲載されるようになりました。
虫のこえを聴いてみたり、自分の言葉で表してみたり、楽器を手作りしてみたり、ぜひ子どもたちと一緒に楽しめるといいですね!










どうして変わってしまったの?