小学校第4学年歌唱共通教材「もみじ」について解説していきます。
後半では、ピアノ伴奏をする際のコツや指導する際のポイントについてもお伝えしていきます。
もくじ
歌詞
まずは歌詞です。1番と2番から成っています。
1.秋の夕日に照る山もみじ
こいもうすいも数ある中に
松をいろどるかえでやつたは
山のふもとのすそもよう
2.たにの流れに散りうくもみじ
波にゆられてはなれて寄って
赤や黄色の色さまざまに
水の上にも織(お)るにしき
初版の歌詞の漢字
上記の歌詞は、実際に教科書に掲載されているものです。
4年生までで習う漢字が使われており、その他はひらがなが使われています。
この曲が掲載されたのが1911年の『尋常小学唱歌』です。
当時の掲載は下記の通りです。
紅葉
1.秋の夕日に照る山紅葉、
濃いも薄いも數ある中に
松をいろどる楓や蔦は、
山のふもとの裾模様。
2.溪の流に散り浮く紅葉、
波にゆられて離れて寄って、
赤や黄色の色さまざまに、
水の上にも織る錦
『新訂 尋常小学唱歌 第二学年用』
漢字が多くなると、難しそうな印象もありますが、「裾模様」や「錦」など、漢字になるとイメージしやすくなるものもありますね。
歌詞の意味
1.秋の夕日に照らされている山の紅葉。
たくさんの紅葉の中には濃い色も薄い色もたくさんの種類がある。
緑色の松を彩っているかえでやつたの葉は
山のふもとを着物の裾模様のように彩っていて美しい。
2.山の谷間の流れに散って浮いている紅葉が
川の波に揺られて離れたり寄ったりしている。
赤や黄色などのいろいろな色が
水の上に錦があるように美しい。
最後には、1番も2番も「美しい」と解釈していますが、もともとの歌詞では「美しい」とは一言も言っていません。
「美しい」と言わずに美しいことを表そうとしているこの歌詞の力を感じますね。
紅葉とは
「紅葉」はよみがなは「もみじ」「こうよう」の2種類があります。
もみじ:①秋になって、木の葉の色が赤や黄色にかわること。また、その葉。こうよう。
②カエデのべつのよび名。
こうよう:秋になって、木の葉があかくなること。また、あかくなった葉。
新レインボー小学国語辞典改訂第5版
どちらも同じ「木の葉が赤くなること」ですね。
「もみじ」には②の意味でカエデのことの呼び方にもなるようですが、「もみじ」「こうよう」どちらも木の葉の色が赤くなることを指していますね。
かえで とは
歌詞にでてくる「カエデ」ですが、さきほどのもみじの意味にもあったように、「ザ・もみじ」という葉っぱですね。
つた とは
つた:ブドウ科の植物。まきひげの先にきゅうばんがあり、かべなどをはい上がるように育つ。
新レインボー小学国語辞典改訂第5版
壁や木をつたって伸びているあの葉っぱですね。
たまに建物全体がつたで覆われているのを見かけます。
紅葉するとこんな感じ。
とってもきれいですね。
裾模様 とは
着物の裾にある模様のことですね。
着物全体に模様がある場合は「総模様」と言いますが裾だけにある場合に「裾模様」と呼びます。
山の美しい紅葉の様子を、美しい着物に例えています。
錦 とは
にしき:金や銀の糸でもようをつけた、絹織物。
新レインボー小学国語辞典改訂第5版
水の上に紅葉が美しく浮いている様子を織物の上に美しく描かれた模様に例えています。
作詞・作曲者
作詞:高野辰之
作曲:岡野貞一
この二人のコンピは、小学校の歌唱共通教材曲にたくさん登場します。
第2学年:春がきた
第3学年:春の小川
第4学年:もみじ
第6学年:おぼろ月夜、ふるさと
どの曲ものどかで美しい情景が目の前に浮かぶ名曲ですね。
歌っている情景
「もみじ」で歌われている情景をみていきましょう。
時期と時間
季節はもちろん秋。
時期は地域によって異なりますが、もみじの見ごろとなるのは大体11月ごろでしょう。
時間ですが、夕日に照らされている頃なので、4時くらいでしょう。
東京だと11月の日の入りが16:30~16:45くらいで、夕日に照らされている時刻となると、その前なので4時くらいと考えるといいですね。
大学生にこの時刻の質問をしたことがありますが、3時、5時、6時などといろいろな答えが出てきました。
なんとなくの感覚はあるかもしれませんが、11月に6時までになると真っ暗ですね。
この記事は9/18に書いていますが、6時になると太陽は見えず、薄暗くなっています。
音楽の授業ですが、理科のことにも触れられる曲、ということですね!
方角
また理科の話になりますが、歌われている”もみじのある山”はどの方角にあるでしょうか?
まずは夕日が沈んでいく方角を考えてみましょう。
太陽は東から昇り、西に沈みますので、夕日は西にあります。
その太陽に照らされている山なので、山の方角は東にありますね。
身近にある東の山をイメージしてみると、歌うヒントにもなりますね。
1番と2番の違い
1番と2番の歌詞には舞台にしている場所が変わります。
1番は山のふもとが見えるところなので、山全体が見えるような少し離れた場所から見ています。
2番になると、谷間の川を見ているので、1番からはズームインして山に入っています。
遠くから見ても近くから見ても美しいことを表していますね。
演奏のヒント
この曲を演奏する時に押さえておくべきポイントをご紹介していきます。
美しいもみじについて歌っているこの曲ですが、旋律のリズムや音の上下はとてもシンプルです。
シンプルだからこそ人を惹きつけるのでしょうね。
シンプルすぎてどこに気をつけるべきなのかわかりにくい場合には、ぜひ参考にしてみてください。
4分休符に種類がある?
この曲の休符は1種類、4分休符だけが登場します。
1拍分のお休みですが、これを同じように演奏してしまうととてももったいないです。
大きく分けて、上の楽譜で赤色と青色の2種類の4分休符があります。
矢印を書きましたが、歌詞を見ると赤色の方は次の歌詞につながっていますが、青色の方は句読点が入れられますね。
演奏する時には、赤色のところは本当に休んでしまわずに次につなげていくように演奏すると美しさが増します。
「あきのゆうひに…てるやまもみじ」という感じです。
離れた音はていねいに
この曲のメロディーのほとんどは、隣の音か一つ離れた音に進みます。
ソ→ラ や、ソ→シ といった感じです。
これがソ→ドと4度も離れた音程に飛ぶところがあります。
この離れた音程が急に出てくる印象がありますので、どうしても「ツーン!」と棒でつついたように演奏してしまいやすいです。
そうなるとキツイ印象を与えてしまうので、ていねいに上からそっと置くように演奏すると美しさup!ですね。
上がる4度のときだけでなく、下がる4度も同じですね。
こちらはディミヌエンド(>)も書いてあるのでていねいに演奏しやすいですが、ピアノなら1の指、歌なら地声で出しやすい音なので、「ドン!」と重たいものを下に置いたような音になりやすいです。
あくまでもていねいに演奏して、美しさを保つようにしましょう。
盛り上がりはどこまで?
9小節目から強弱記号がmfになり使われている音も高くなって盛り上がりを見せます。
では、この盛り上がりはどこまで保たれるのでしょうか。
強弱記号でも書いてありますが、ここでは音の高さから見ていきます。
〇印のところの音を見ると同じ「ドレドラソファ」が使われていますね。
リズムが少し変化していますが、もう一度同じ音を使うことで盛り上がりを保ち、高揚した気持ちも保っていることが表されています。
13小節目の「やまのふもと」と歌いだす時に”もう一度!”と思って演奏すると表現しやすいです。
最後だけ5文字
この歌詞は基本的に7文字ずつで構成されています。
最後だけが5文字です。
最後だけ短いですね。
美しいことを歌っているこの歌詞。
「すそもようが美しい」のですが、「すそもよう…」のように言葉を失うほどの感動をしていると考えられます。
また、上述のように休符が4分休符しかないこの曲で文字数が少ないということは、音の長さが長い音符があるということですね。
最後の付点2分音符がそうですね。
長く伸ばす音符は気持ちを込めて歌いやすいので、”美しいなぁ”という感動を長い音符に乗せて演奏すると、短く切ってしまうことはないですし、音の切れる瞬間まで大切に演奏できますね!
まとめ
美しい情景をうたう「もみじ」について解説してきました。
理科的な要素を理解しながら、シンプルな構造に音楽的なものを探し出すことが魅力でしたね。
もともとは2年生向けの本に掲載されていたこの曲ですが、内容を考えると4年生で学習することが納得できますね。
いつもなら下を向いて歩いていた道が、ちょっと周りを見たり新しい発見につながるといいですね!
あきのゆうひに
てるやまもみじ
こいもうすいも
かずあるなかに
まつをいろどる
かえでやつたは
やまのふもとの
すそもよう