「スキーの歌」の解説と演奏のヒント

小学校第5学年歌唱共通教材「スキーの歌」について解説していきます。

後半では、ピアノ伴奏をする際のコツや指導する際のポイントについてもお伝えしていきます。

スキーの歌 簡易伴奏
スキーの歌 上級者向け

もくじ

歌詞について

歌詞は1、2、3番から成っています。

※著作権の関係から歌詞の掲載は控えています。

歌詞の意味

1.日の光が輝き、野山が映えて引き立って見える。(繰り返し)

  ふもとを目がけてスタートを切ると

  粉雪が舞い立ち、風は叫ぶように音を立てる。

2.大空を飛ぶように大地を走っている。(繰り返し)

  白一色で影が一つもない世界の中を

  ストックを手に持ち私は飛ぶように進む。

3.山を越え丘を越え、斜面を下る。(繰り返し)

  すぐに滑走をさえぎる谷をめがけて

  踊るように滑り降りればまるで飛んでいる鳥の心地だ。

太陽・山・風などの自然の中で心躍らせながら颯爽と滑っている様子が目に浮かぶ歌詞です。

鳥のように感じられるのもスキーならではのスピード感ですね。

私自身がスキーをした時も、スキー板と雪がこすれる音、風がゴーッとうなる音を聴き、斜面ばかりではなく景色をふと見た時にとても気持ちよくなったことなどが印象に残っています。

時系列

1~3番の歌詞をよく見てみると、時系列になっているのがわかりますね。

1番はスタートする前。

2番は真っ白な斜面を滑り降りているところ。

3番はゴールとする谷が見えてきたところ。

どの瞬間も楽しむことを忘れず、全身で滑走を感じています。

作詞作曲

作詞:林 柳波

作曲:橋本 國彦

作詞の林柳波は他の小学校歌唱共通教材曲にも登場します。

第1学年:うみ

第2学年:虫のこえ

第2学年:かくれんぼ

どの曲も印象的な歌詞でとても覚えやすい名曲ですね。

最初はト長調ではなかった?

この曲は1932(昭和7)年に作曲され、同年発行の『新訂尋常小学校唱歌』に掲載されました。

掲載当初は#が3つのイ長調で書かれています。

スキーの歌 掲載当初はイ長調だった

現在掲載されているのはト長調です。

ト長調よりも原曲のイ長調の方が、キラキラ輝いた雰囲気がより強く表れていると感じます。

ただし、ト長調でも十分にその輝きは伝えられていると思います。

音域については、一つ下がっただけですし、イ長調の場合の最高音であるレ(上記楽譜の1段目2小節目、4段目2小節目)も、5年生の他の歌唱共通教材曲である「こいのぼり」「冬げしき」にも出てきますので、音域を下げるためではなかったと考えられます。

イ長調からト長調にすることで、調号の#の数が3つから1つに減るので、学習内容を考えて変更されたのだと考えられます。

24曲ある小学校歌唱共通教材曲のうち、15曲が調号ナシの曲です。

小学校で学習する曲については、ハ長調やイ短調(どちらも調号なし)の曲を歌ったり演奏したりできるように学習指導要領にも書かれています。

あとの9曲のうち、♭1つが5曲、#1つが3曲、#2つが1曲となっていて、調号が3つ以上ついている曲はありません。

複雑な楽譜を読んでいくことは求められていない、ということですね。

演奏のヒント

この曲を演奏する時に押さえておくべきポイントをご紹介していきます。

颯爽と滑る様子や心躍る様子をうまく演奏で表現するにはどのような工夫が必要なのか、曲の構造もふまえた演奏のヒントを解説していきます。

リズム

この曲の特徴は出だしの印象的なリズムですね。

出だしのリズムをとらえる

”タッカタタ”と始まる”タッカ”の部分です。

ここのリズムがあまくなってしまい、8分音符の連続のように演奏すると、「かーがーやーく」のようになり勢いが半減しますので、きっちりとリズムを表して演奏したいところです。

ポイントは裏拍を感じることです。

この赤で囲った部分が裏拍にあたります。

伴奏を弾く場合はこの音をよく聞き、歌だけの場合もこのタイミングを体で感じるとタッカのリズムがうまく表せ、心躍らせている雰囲気が出てきます。

スタッカートでウキウキ感を演出

この曲の特徴の2つ目として、伴奏にスタッカートが書かれていることです。

簡易伴奏だとこちら。

上級者向けだとこちら。

どちらもスタッカートがたくさん書かれていますね。

短く切って演奏することで、颯爽と滑る雰囲気とウキウキ、ワクワクとした気持ちを表すことができます。

演奏する時も、ぜひウキウキ・ワクワクと思いながら演奏したいですね!

勢いはどこから生まれてどこで落ち着く?

前述の”タッカ”のリズムから始まったメロディーですが、ウキウキした気持ちを一気に盛り上がらせる部分があります。

この上昇する音形の部分ですね。

シから1オクターブ上のシまで一気に駆け上がっています。

歌う時には、一気に上昇することを考えて、1小節目の下のシの音は下がりきらずに1オクターブ上のシを念頭に置いて歌うとうまく上がっていきやすいです。

さて、この盛り上がったフレーズですが、下りは時間をかけています。

一小節ずつ一音ずつ下がっています。

表現としては、気持ちを収めていくというよりは、盛り上がった気持ちがほんの少し落ち着くと考えるといいですね。

曲全体のメロディーラインを見てみても、上昇する部分がよく目立っています。

赤印が上昇部分

スキーは上から下に滑っていくのですが、この曲では上昇の音形がたくさんあり、気持ちは上へ上へと飛んでいく様子がイメージできます。

上昇の音形に気持ちを乗せて、大地を鳥のように飛んでいくイメージを持って演奏するといいですね!

コーダつき

この曲の構造は「a a’ b a” コーダ」という構造で、最後に”コーダ”というものが付属しています。

コーダ:ある楽曲において、本来の主要部分に対して付け加えられた終結部分。

『新編 音楽中辞典』より

楽譜だと最後のこちらの赤で囲った部分です。

付け加えられているので、なんとなくおまけかな?と感じてしまいますが、この曲では実は大切な部分になります。

歌詞も”風は叫ぶ 風は叫ぶ”と繰り返していて、もう一度言いたい!という気持ちの部分ですね。

そしてこのコーダの部分、なんとなく歌いやすい気がしませんか?

実は最初に出てきたメロディーラインを使っているからです。

しかも、赤で囲った最初の8分音符の部分が、コーダで使用された時には4分音符と倍の長さになっています。

8分音符だとスピードを出して颯爽と滑る様子を表れていますが、4分音符にすることで高ぶった気持ちを高らかに歌う様子が伝わってきます。

4分音符の長さをしっかり意識すると高らかな雰囲気が出やすくなります。

主題のメロディーをコーダに使い、音の長さを変えて伝えたい内容を表しているのは巧みですね。

まとめ

大地を胸を高鳴らせて颯爽と滑っていく様子が書かれた「スキー」について見てきました。

リズム・スタッカート・上昇の音形が多用され、スキーをすることを心から楽しんでいる様子が目に浮かんでくる曲でした。

子どもたちのワクワクする瞬間やすごく楽しいことをしている時間を具体的に聞いてみると盛り上がりそうですね!

1番から3番まで歌うと時系列になっているので、時間は過ぎていっているのですが、ワクワクしている気持ちはずっと持ち続けていました。

時間が過ぎてもずっとワクワクするようなことを大人になってもいくつも持っていられるといいな、と思います。