小学校第3学年歌唱共通教材「うさぎ」について解説していきます。
後半では、ピアノ伴奏をする際のコツや指導する際のポイントについてもお伝えしていきます。
もくじ
歌詞
まずは歌詞です。1番のみの歌詞です。
うさぎうさぎ
なに見てはねる
十五夜お月様見てはねる
歌詞の意味
意味は歌詞をそのまま解釈していいですね。
「うさぎ、うさぎ、何を見てはねるの?
十五夜のお月様を見てはねるのだよ」
さて、このうさぎはどこにいるのでしょうか。
目の前の地面にいると解釈するよりは、十五夜の月夜に浮かぶ満月の中に見えるうさぎ、と考えるといいですね。
月の中のうさぎに「何を見てはねるの?」と問いかけ、答えるのは月の中のうさぎではなく、もう一人の人物が答える、もしくは質問した本人が自問自答するイメージですね。
十五夜の月が美しいので、月の中のうさぎももちろん十五夜のお月様を見てはねているのだよ、と解釈できますね。
この記事を書いているのが2021年9月21日で、8年ぶりに中秋の名月と満月が重なる記念すべき日です。
今は晴れていますので、このまま夜に満月が見られるといいな、と思います。
旋律
江戸時代から歌われているこの古謡はとてもシンプルな旋律ですが、これは陰音階を使っています。(ミファラシド)
地域によっては、1段目のファに#をつけて歌っていたところもあるようです。
使っている音の数が少ないため、楽器での演奏と歌を合わせると楽しいですね。
その際には、キツイ音にならないよう、曲にふさわしくしっとりとしたやわらかい音で演奏できるように、楽器を優しく扱うといいですね。
演奏のヒント
この曲を演奏する時に押さえておくべきポイントをご紹介していきます。
9小節しかない旋律ですが、シンプルでも興味深い要素がたくさんあります。
繰り返すメロディー
最初の部分は、前半と後半とで同じ動きの旋律が使われています。
「うさぎ、うさぎ」と問いかけ、「何を見てはねてるの?」ともう一度聞いている、と考えるといいですね。
盛り上がり
一番高い音が出てくる5~6小節目のこの部分は、クレッシェンドどディミヌエンド(デクレッシェンド)をうまく利用して高い音を頂点に盛り上げていくといいですね。
息の吸い方
「十五夜お月様」の後にブレス記号(V)がありますが、ここはたっぷり吸ってしまうと「十五夜お月様。見てはねる」のように、文章の流れが途中で切れて聞こえてしまいます。
かといってブレス無しで歌おうとすると、最後に息切れして歌えなくなってしまいます。
息を吸うポイントは、”足りなくなる分だけサッと吸う”です。
たくさん吸わなくても最後まで歌いきれるはずなので、ちょっとだけ吸ってこの1段のフレーズはずっとつながっているように歌うと、この曲のしっとり感が表現しやすくなります。
伴奏する時にも、”つながっているけれど、ちょっとだけ息を吸っているのをちょっとだけ待ってあげる”ように弾くといいですね。
はああ?
いきなりびっくりする見出しですが、歌詞の一部を取り出したものです。
7~8小節目ですね。
この部分の音を伸ばす記号の「ーー」ですが、その前の「は」の母音をそのまま伸ばしたまま音の高さだけを変えるように歌います。
良くないのは、「は、あ、あ」と母音をもう一度言い直してしまうこと。
音の高さが変わるので、ついやってしまいがちですが、伸ばしたままつなげて歌うことを意識すると成功しやすくなります。
リズムに注意
最後のこの部分ですが、リズムがわからなくなりやすいです。
というのも、今までは2小節ごとの流れだったのに、最後だけ字余りのように3小節でひとかたまりになるからです。
ただし、構成している音符を見ると8分音符と4分音符だけなので、「タタタン タタタン」と同じリズムを2回繰り返していると考えると正しいリズムがわかりやすくなります。
別の「うさぎ」だった?
この「うさぎ」の曲は古くから歌われていましたが、初めて学校用の本に採用されたのは1892~1893年に刊行された『小学唱歌』の第二集です。
ただ、1932年(昭和7年)発行の『新訂尋常小学唱歌』には下の「兎」が収録されています。
これは現在歌われている「うさぎ」とは別の曲ですね。
掲載の変遷を現在調査中です。
またわかりましたらアップします!
まとめ
古くから歌い継がれてきた「うさぎ」について解説してきました。
シンプルな要素にも少し気を向けることで曲の良さが浮き彫りになるメロディーでしたね。
やわらかさを持って演奏することがポイントです。
木琴や鉄琴など、ついカンカンときつく叩いてしまいがちな楽器もこの曲をきっかけに叩き方を工夫できるといいですね。